また、「ひとりが楽なんです」
という都合のいいウソをついた。
肌がキレイなら多少のアラは隠せる気がするから、
スキンケアは自分が信じるものをノーストレスで。
オレンジ精油の香りに包まれて眠ると
明日がまっしろな今日になった。
バスタオルで髪を拭き、
散らかったテーブルをぼんやり眺めながら
いつも通り2人ぶんのコーヒーを淹れる。
ふと触れた頬のやわらかさに
ふふっと笑みがこぼれた。
「じゃあ、いってくるね」
そう見えるようにしてるだけで、
私、しっかりしてないよ。
本当は、あなたにめんどくさいって
思われるのがこわいだけ。
もどかしいのは
カンペキを求めすぎて前に進めないこと。
必要なのは
自分を甘やかしてあげること。
ぎゅっと手のひらで押し込んだ泡がはじけて
肌に溶け込んでいくように
明日からの私が自信で満たされますように。
下地、コントロールカラー、
ファンデーション、ハイライト、
ミルフィーユみたいに丁寧に重ねた肌が
いつもより軽やかに見えるのは、
どんより疲れた肌に仕込んだ泡マスクで
潤いをチャージしておいたから。
寝落ちしたドラマの続きは帰ってからのお楽しみ
ジム用のウェアを新調して
トレンドカラーを指先に纏ったら
変わりばえのないいつもの景色が鮮やかに見えた。
うん。これで明日も頑張れる。
あどけなくてかわいい笑顔を作るのも
スキをみせながらガードする駆け引きも
難しいけど高評価。
「今日はありがとう。こんなに笑ったの初めて」
無意識に親指がなぞる定型文と何色ものハートを
今まで何個ムダ使いしてきたんだろう。
一緒にいると楽しいよりも
離れてると寂しいと思える誰かに出会いたい。
この濃密でふわふわな泡に優しく抱きしめられているみたいに、特別な誰かに誰よりも大事にされたい。
でも、その前に、
まずは自分が愛しくなるぐらいの肌を
デコルテまで念入りにスタンバイしておこう。